慰謝料の支払いは、銀行口座に振込送金する方法が一般的です。不貞行為の被害者名義の銀行口座に振込みを行うわけですが、弁護士が被害者の代理人の場合は、原則、弁護士名義の銀行口座に振込みを行います。銀行振込は、通帳に支払金額と日付が記帳されるため、安心且つ確実な方法です。
ところが、実際には、現金(慰謝料)の受渡しを望まれることも少なくありません。不貞行為の被害者及び加害者が履歴を残したくないケースです。現金(慰謝料)の受渡しをされるときには、加害者の方は、次のことに注意を払わなくてはなりません。
1. 本人確認の徹底
銀行振込の場合は、銀行口座の名義人を見たら、被害者の氏名が分かります。しかし、現金の受渡しの場合は、ご本人と判別するものがありません。お互いに公的な身分証明書を見せ合い、本人確認を行うべきです。
2. 領収書の受取り
被害者に言い辛いという理由から領収書を求めないケースがあります。しかし、領収書は、慰謝料の支払いを終えた唯一の証拠です。後から、現金(慰謝料)の受取りの事実を否定されますと、取り返しが付きません。領収書には、金額、日付、宛名(加害者)、発行者(被害者)の氏名と必要な情報が記載されています。当日に申入れても、被害者が用意していない可能性がありますので、事前に申入れておくべきです。
そして、当日は、現金(慰謝料)と領収書を同時に交換してください。
3. 示談書の作成
裁判外解決の場合は、示談成立後に慰謝料を支払うのが鉄則です。現金(慰謝料)の受渡しの前に示談書を締結しておくべきです。