不貞行為の慰謝料を請求する方も請求される方も求償権の存在を意識しなくてはなりません。求償権とは、他方の債務者の債務を弁済したものが他方の債務者に対して有する償還請求権のことです。よく意味が分からないと思いますので、例を挙げます。
不貞行為の被害者をA子さん、不貞行為の加害者をB夫さん(A子さんの夫)、C美さん(B夫さんの不貞相手)とします。A子さんは、B夫さんとC美さんの不貞行為により、300万円に相当する精神的損害を受けました。A子さんは、C美さんに対し、不貞行為の慰謝料300万円を請求し、C美さんがその請求に応じたとします。不貞行為は、共同不法行為に該当し、B夫さんとC美さんの二人に損害賠償責任が生じます。本件は、C美さんがA子さんに300万円全額を支払いました。C美さんは、A子さんに対する損害賠償責任を果たしたため、B夫さんに慰謝料の負担を求められます。この権利のことを求償権といいます。
不貞行為の被害者も加害者も、常に求償権のことを意識する必要があります。求償権を考慮に入れず、不本意な結果になることも少なくありません。